J039 血漿交換療法(1) 血漿交換療法は、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症、劇症肝炎、薬物中毒、重症筋無力症、悪性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、血栓性血小板減少性紫斑病、重度血液型不適合妊娠、術後肝不全、急性肝不全、多発性硬化症、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎、ギラン・バレー症候群、天疱瘡、類天疱瘡、巣状糸球体硬化症、抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体)型急速進行性糸球体腎炎、抗白血球細胞質抗体(ANCA)型急速進行性糸球体腎炎、溶血性尿毒症症候群、家族性高コレステロール血症、難治性高コレステロール血症に伴う重度尿蛋白を呈する糖尿病性腎症、閉塞性動脈硬化症、中毒性表皮壊死症、川崎病、スティーヴンス・ジョンソン症候群若しくはインヒビターを有する血友病の患者、ABO血液型不適合間若しくは抗リンパ球抗体陽性の同種腎移植、ABO血液型不適合間若しくは抗リンパ球抗体陽性の同種肝移植、移植後抗体関連型拒絶反応又は慢性C型ウイルス肝炎の患者に対して、遠心分離法等により血漿と血漿以外とを分離し、二重濾過法、血漿吸着法等により有害物質等を除去する療法(血漿浄化法)を行った場合に算定できるものであり、必ずしも血漿補充を要しない。(2) 当該療法の対象となる多発性骨髄腫、マクログロブリン血症の実施回数は、一連につき週1回を限度として3月間に限って算定する。(3) 当該療法の対象となる劇症肝炎については、ビリルビン及び胆汁酸の除去を目的に行われる場合であり、当該療法の実施回数は、一連につき概ね10回を限度として算定する。(4) 当該療法の対象となる薬物中毒の実施回数は、一連につき概ね8回を限度として算定する。(5) 当該療法の対象となる重症筋無力症については、発病後5年以内で重篤な症状悪化傾向のある場合、又は胸腺摘出術や副腎皮質ホルモン剤に対して十分奏効しない場合に限り、当該療法の実施回数は、一連につき月7回を限度として3月間に限って算定する。(6) 当該療法の対象となる悪性関節リウマチについては、都道府県知事によって特定疾患医療受給者と認められた者であって、血管炎により高度の関節外症状(難治性下腿潰瘍、多発性神経炎及び腸間膜動脈血栓症による下血等)を呈し、従来の治療法では効果の得られない者に限り、当該療法の実施回数は、週1回を限度として算定する。(7) 当該療法の対象となる全身性エリテマトーデスについては、次のいずれにも該当する者に限り、当該療法の実施回数は、月4回を限度として算定する。なお、測定した血清補体価、補体蛋白の値又は抗DNA抗体の値を診療録に記載すること。ア 都道府県知事によって特定疾患医療受給者と認められた者イ 血清補体価(CH50)の値が20単位以下、補体蛋白(C3)の値が40mg/dL以下及び抗DNA抗体の値が著しく高く、ステロイド療法が無効又は臨床的に不適当な者ウ 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)又は中枢神経性ループス(CNSループス)と診断された者(8) 当該療法の対象となる血栓性血小板減少性紫斑病の患者に実施する場合は、当該療法の開始後1月を上限として、原則として血小板数が15万/μL以上となった日の2日後まで算定できる。ただし、血小板数が15万/μL以上となった後1月以内に血栓性血小板減少性紫斑病が再燃した場合等、医学的な必要性により別途実施する場合には、診療録及び診療報酬明細書の摘要欄にその理由及び医学的な必要性を記載すること。(9) 当該療法の対象となる重度血液型不適合妊娠とは、Rh式血液型不適合妊娠による胎内胎児仮死又は新生児黄疸の既往があり、かつ、間接クームス試験が妊娠20週未満にあっては64倍以上、妊娠20週以上にあっては128倍以上であるものをいう。(10) 当該療法の対象となる術後肝不全については、手術後に発症した肝障害(外科的閉塞性機序によるものを除く。)のうち次のいずれにも該当する場合に限り、当該療法の実施回数は、一連につき概ね7回を限度として算定する。ア 総ビリルビン値が5mg/dL以上で、かつ、持続的に上昇を認める場合イ へパプラスチンテスト(HPT)40%以下又はComa Grade Ⅱ以上(11) 当該療法の対象となる急性肝不全については、プロトロンビン時間、昏睡の程度、総ビリルビン及びヘパプラスチンテスト等の所見から劇症肝炎又は術後肝不全と同程度の重症度を呈するものと判断できる場合に限り、当該療法の実施回数は、一連につき概ね7回を限度として算定する。(12) 当該療法の対象となる多発性硬化症、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の実施回数は、一連につき月7回を限度として3月間に限って算定する。(13) 当該療法の対象となるギラン・バレー症候群については、Hughesの重症度分類で4度以上の場合に限り、当該療法の実施回数は、一連につき月7回を限度として、3月間に限って算定する。(14) 当該療法の対象となる天疱瘡、類天疱瘡については、診察及び検査の結果、診断の確定したもののうち他の治療法で難治性のもの又は合併症や副作用でステロイドの大量投与ができないものに限り、当該療法の実施回数は、一連につき週2回を限度として、3月間に限って算定する。ただし、3月間治療を行った後であっても重症度が中等度以上(厚生省特定疾患調査研究班の天疱瘡スコア)の天疱瘡の患者については、さらに3月間に限って算定する。(15) 当該療法の対象となる巣状糸球体硬化症は、従来の薬物療法では効果が得られず、ネフローゼ状態を持続し、血清コレステロール値が250mg/dL以下に下がらない場合であり、当該療法の実施回数は、一連につき3月間に限って12回を限度として算定する。(16) 当該療法の対象となる抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体)型急速進行性糸球体腎炎は、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)と診断された患者のうち、抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体)が陽性であった患者について、一連につき2クールを限度として行い、1クール(2週間に限る。)につき7回を限度として算定する。(17) 当該療法の対象となる家族性高コレステロール血症については、次のいずれかに該当する者のうち、黄色腫を伴い、負荷心電図及び血管撮影により冠状動脈硬化が明らかな場合であり、維持療法としての当該療法の実施回数は週1回を限度として算定する。ア 空腹時定常状態の血清LDLコレステロール値が370mg/dLを超えるホモ接合体の者イ 食事療法及び薬物療法を行っても血清LDLコレステロール値が170mg/dL以下に下がらないヘテロ接合体の者(18) 当該療法の対象となる閉塞性動脈硬化症については、次のいずれにも該当する者に限り、当該療法の実施回数は、一連につき3月間に限って10回を限度として算定する。ア フォンテイン分類Ⅱ度以上の症状を呈する者イ 薬物療法で血中総コレステロール値220mg/dL又はLDLコレステロール値140mg/dL以下に下がらない高コレステロール血症の者ウ 膝窩動脈以下の閉塞又は広範な閉塞部位を有する等外科的治療が困難で、かつ従来の薬物療法では十分な効果を得られない者(19) 当該療法の対象となる中毒性表皮壊死症又はスティーヴンス・ジョンソン症候群の実施回数は、一連につき8回を限度として算定する。(20) 当該療法の対象となるインヒビターを有する血友病は、インヒビター力価が5ベセスダ単位以上の場合に限り算定する。(21) 当該療法の対象となる同種腎移植は、遠心分離法等による血漿と血漿以外の分離又は二重濾過法により、ABO血液型不適合間の同種腎移植を実施する場合又はリンパ球抗体陽性の同種腎移植を実施する場合に限り、当該療法の実施回数は一連につき術前は4回を限度とし、術後は2回を限度として算定する。(22) 当該療法の対象となる同種肝移植は、二重濾過法により、ABO血液型不適合間の同種肝移植を実施する場合又はリンパ球抗体陽性の同種肝移植を実施する場合に限り、当該療法の実施回数は一連につき術前は4回を限度とし、術後は2回を限度として算定する。(23) 当該療法の対象となる慢性C型ウイルス肝炎は、セログループ1(ジェノタイプⅡ(lb))型であり、直近のインターフェロン療法を施行した後、血液中のHCV RNA量が100KIU/mL以上のものとする。なお、当該療法の実施回数は、直近のインターフェロン療法より、5回を限度として算定する(ただしインターフェロン療法に先行して当該療法を行った場合に限る。)。(24) 当該療法の対象となる川崎病は、免疫グロブリン療法、ステロイドパルス療法又は好中球エラスターゼ阻害薬投与療法が無効な場合又は適応とならない場合に限り、一連につき6回を限度として算定する。(25) 当該療法の対象となる溶血性尿毒症症候群の実施回数は一連につき21回を限度として算定する。(26) 当該療法の対象となる抗白血球細胞質抗体(ANCA)型急速進行性糸球体腎炎は、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)と診断された患者のうち、抗白血球細胞質抗体(ANCA)が陽性であった患者について、一連につき2クールを限度として行い、1クール(2週間に限る。)につき7回を限度として算定する。(27) 血漿交換療法を行う回数は、個々の症例に応じて臨床症状の改善状況、諸検査の結果の評価等を勘案した妥当適切な範囲であること。(28) 本療法を実施した場合は、診療報酬明細書の摘要欄に一連の当該療法の初回実施日及び初回からの通算実施回数(当該月に実施されたものも含む。)を記載する。(29) 血漿交換療法を夜間に開始した場合とは、午後6時以降に開始した場合をいい、終了した時間が午前0時以降であっても、1日として算定する。ただし、夜間に血漿交換療法を開始し、12時間以上継続して行った場合は、2日として算定する。(30) 「注2」に規定する難治性高コレステロール血症に伴う重度尿蛋白を呈する糖尿病性腎症とは、重度尿蛋白(1日3g以上の尿蛋白を呈するもの又は尿蛋白/尿クレアチニン比が3g/gCr以上のものに限る。)を呈する糖尿病性腎症(血清クレアチニンが2mg/dL未満のものに限る。)であって、薬物治療を行っても血清LDLコレステロール値が120mg/dL未満に下がらない場合である。この場合、当該療法の実施回数は、一連につき12回を限度として算定する。(31) 「注3」については、臓器移植後に抗体関連型拒絶反応を呈する患者を対象として、抗ドナー抗体を除去することを目的として実施する場合に限り、当該療法の実施回数は、一連につき5回を限度として算定する。なお、医学的な必要性から一連につき6回以上算定する場合には、その理由を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。