[留意]L008 マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔

L008 マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔(1) ガス麻酔器を使用する閉鎖式・半閉鎖式等の全身麻酔を20分以上実施した場合は、本区分により算定する。(2) 静脈注射用麻酔剤を用いて全身麻酔を実施した場合であって、マスク又は気管内挿管による酸素吸入又は酸素・亜酸化窒素混合ガス吸入と併用する場合は、20分以上実施した場合は、本区分により算定する。(3) 本区分の全身麻酔の実施時間は、当該麻酔を行うために閉鎖循環式全身麻酔器を患者に接続した時点を開始時間とし、患者が当該麻酔器から離脱した時点を終了時間とする。なお、これ以外の観察等の時間は実施時間に含めない。(4) 麻酔が困難な患者とは、以下に掲げるものをいい、麻酔前の状態により評価する。ア 心不全(NYHAⅢ度以上のものに限る。)の患者イ 狭心症(CCS分類Ⅲ度以上のものに限る。)の患者ウ 心筋梗塞(発症後3月以内のものに限る。)の患者エ 大動脈閉鎖不全、僧帽弁閉鎖不全又は三尖弁閉鎖不全(いずれも中等度以上のものに限る。)の患者オ 大動脈弁狭窄(経大動脈弁血流速度4m/秒以上、大動脈弁平均圧較差40mmHg以上又は大動脈弁口面積1㎠以下のものに限る。)又は僧帽弁狭窄(僧帽弁口面積1.5㎠以下のものに限る。)の患者カ 植込型ペースメーカー又は植込型除細動器を使用している患者キ 先天性心疾患(心臓カテーテル検査により平均肺動脈圧25mmHg以上であるもの又は、心臓超音波検査によりそれに相当する肺高血圧が診断されているものに限る。)の患者ク 肺動脈性肺高血圧症(心臓カテーテル検査により平均肺動脈圧25mmHg以上であるもの又は、心臓超音波検査によりそれに相当する肺高血圧が診断されているものに限る。)の患者ケ 呼吸不全(動脈血酸素分圧60mmHg未満又は動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比300未満のものに限る。)の患者コ 換気障害(1秒率70%未満かつ肺活量比70%未満のものに限る。)の患者サ 気管支喘息(治療が行われているにもかかわらず、中発作以上の発作を繰り返すものに限る。)の患者シ 糖尿病(HbA1cがJDS値で8.0%以上(NGSP値で8.4%以上)、空腹時血糖160mg/dL以上又は食後2時間血糖220mg/dL以上のものに限る。)の患者ス 腎不全(血清クレアチニン値4.0mg/dL以上のものに限る。)の患者セ 肝不全(Child-Pugh分類B以上のものに限る。)の患者ソ 貧血(Hb6.0g/dL未満のものに限る。)の患者タ 血液凝固能低下(PT-INR2.0以上のものに限る。)の患者チ DICの患者ツ 血小板減少(血小板5万/uL未満のものに限る。)の患者テ 敗血症(SIRSを伴うものに限る。)の患者ト ショック状態(収縮期血圧90mmHg未満のものに限る。)の患者ナ 完全脊髄損傷(第5胸椎より高位のものに限る。)の患者ニ 心肺補助を行っている患者ヌ 人工呼吸を行っている患者ネ 透析を行っている患者ノ 大動脈内バルーンパンピングを行っている患者ハ BMI35以上の患者(5) (4)の場合に該当し、本区分1から5までのイに掲げる点数により算定する場合にあっては、(4)のアからハまでの中から該当する状態を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。(6) 流量計を装置した酸素ボンベ及びエーテル蒸発装置を使用し、気管内チューブ挿入吹送法又はノンレブリージングバルブを使用して麻酔を維持した場合は本区分により算定できる。(7) 本区分について「通則3」の加算を算定する場合の所定点数は、「注2」、「注4」、「注5」及び「注7」による加算を含むものとする。(8) 麻酔の種類等についてア 「心臓手術」とは、開胸式心大血管手術をいう。イ 「低血圧麻酔」とは、手術操作を安全にし、出血量を減少させる目的で、脳動脈瘤手術や出血しやすい手術の際に、低血圧の状態を維持する麻酔をいう。なお、この場合の「低血圧」とは概ね、患者の通常収縮期血圧の60%又は平均動脈圧で60~70mmHgを標準とする。ウ 「高頻度換気法」とは、特殊な換気装置を使用し、1回換気量を少なくし、換気回数を著しく増加させた換気法をいう。なお、この場合の「換気回数」は概ね1分間に60回以上である。エ 「低体温麻酔」は、重度脳障害患者への治療的低体温では算定できない。(9) 麻酔の種類等における実施時間についてア 「低体温麻酔」については、クーリングを開始した時点から復温する時点までをいう。イ 「低血圧麻酔」については、人為的低血圧を開始した時点から低血圧を離脱する時点までをいう。ウ 「高頻度換気法による麻酔」については、特殊な換気装置を作動させた時点から終了させた時点までをいう。エ 「人工心肺を使用した麻酔」については、人工心肺装置に接続し装置を動かし始めた時点から装置を停止した時点までをいう。(10) 複数の点数に分類される麻酔や手術が一の全身麻酔の中で行われる場合においては、行われた麻酔の中で最も高い点数のものを算定する。なお、ここでいう一の全身麻酔とは、当該麻酔を行うために閉鎖循環式全身麻酔器を接続した時点を開始とし、患者が麻酔器から離脱した時点を終了とする麻酔をいう。(11) 臓器移植術加算は、K514-4同種死体肺移植術、K605-2同種心移植術、K605-4同種心肺移植術、K697-7同種死体肝移植術、K709-3同種死体膵移植術、K709-5同種死体膵腎移植術、K716-6同種死体小腸移植術又はK780同種死体腎移植術が算定できる場合に限り算定する。(12) 麻酔の実施時間ア 全身麻酔の実施時間は、(3)により計算する。イ 当該麻酔の開始時間及び終了時間を麻酔記録に記載すること。ウ 複数の点数の区分に当たる麻酔が行われた場合は、以下のように算定する。(イ) 同じ点数区分にある麻酔の時間について合算する。(ロ) 麻酔時間の基本となる2時間については、その点数の高い区分の麻酔時間から順に充当する。(ハ) (ロ)の計算を行った残りの時間について、それぞれ「注2」の規定に従い30分又はその端数を増すごとに加算を行う。(ニ) (ハ)の場合において、各々の区分に係る麻酔が30分を超えない場合については、それらの麻酔の実施時間を合計し、その中で実施時間の長い区分から順に加算を算定する。なお、いずれの麻酔の実施時間も等しい場合には、その中で最も高い点数の区分に係る加算を算定する。例1 麻酔が困難な患者以外の患者に対し、次の麻酔を行った場合① 最初に仰臥位で10分間② 次に伏臥位で2時間30分間③ 最後に仰臥位で20分間の計3時間の麻酔を行った場合基本となる2時間に②の2時間を充当 9,050点②の残り30分の加算 900点仰臥位で行われた①と③を合計して30分の加算 600点算定点数 10,550点例2 麻酔が困難な患者に対し、次の麻酔を行った場合① 最初に仰臥位で10分間② 次に側臥位で1時間20分間③ 最後に仰臥位で47分間の計2時間17分の麻酔を行った場合基本となる2時間に②の1時間20分+①と③の57分のうち40分9,130点①と③の残り17分の加算 600点算定点数 9,730点例3 麻酔が困難な患者に対し、次の麻酔を行った場合① 最初に仰臥位で5分間② 次に側臥位で21分間③ 次に分離肺換気で1時間27分間④ 次に側臥位で30分間⑤ 最後に仰臥位で5分間の計2時間28分の麻酔を行った場合基本となる2時間に③の1時間27分+②と④の51分のうち33分16,600点②と④の残り18分+①と⑤の10分の合計28分の加算 660点算定点数 17,260点例4 麻酔が困難な患者に対し、次の心臓手術の麻酔を行った場合① 最初に仰臥位で10分間② 次に心臓手術を人工心肺装置を使用せずに45分間③ 次に心臓手術を人工心肺装置を使用して2時間25分間④ 次に心臓手術を人工心肺装置を使用せずに1時間⑤ 最後に仰臥位で10分間の計4時間30分の麻酔を行った場合基本となる2時間に③の2時間を充当 16,600点②+④で1時間45分となり、このうち30分×3の加算 2,700点③の残り25分間に④の残り15分間のうち5分間を加算 1,200点①+⑤の20分間に④の残り10分間を加算 600点算定点数 21,100点(13) 酸素・窒素(注3)ア 酸素又は窒素の価格は、「酸素及び窒素の価格」の定めるところによる。イ 酸素及び窒素を動力源とする閉鎖循環式麻酔装置を使用して全身麻酔を施行した場合、動力源として消費される酸素及び窒素の費用は、「注3」の加算として算定できない。(14) 硬膜外麻酔併施加算(注4)硬膜外麻酔を併せて行った場合は、その区分に応じて「注4」に掲げる点数を所定点数に加算し、さらにその実施時間に応じて「注5」に規定する加算を算定する。(15) 所定点数に含まれる費用ア 本区分の麻酔法の際に使用するソーダライム等の二酸化炭素吸着剤の費用は所定点数に含まれ、別に算定できない。イ 区分番号「D220」呼吸心拍監視、新生児心拍・呼吸監視、カルジオスコープ(ハートスコープ)、カルジオタコスコープの検査に要する費用は本区分の所定点数に含まれ、本区分の所定点数を算定した同一日においては、麻酔の前後にかかわらず、当該検査に要する費用は別に算定できない。ウ 体温(深部体温を含む。)測定の検査に要する費用は本区分の所定点数に含まれ、別に算定できない。エ 経皮的動脈血酸素飽和度測定又は終末呼気炭酸ガス濃度測定に要する費用は所定点数に含まれ、本区分の所定点数を算定した同一日においては、麻酔の前後にかかわらず、経皮的動脈血酸素飽和度測定及び終末呼気炭酸ガス濃度測定は別に算定できない。(16) 「注7」に規定する術中経食道心エコー連続監視加算は、手術患者の心臓機能を評価する目的で経食道心エコー法を行った場合に算定できる。(17) 「注7」の麻酔が困難な患者のうち冠動脈疾患又は弁膜症の患者とは、(4)のイからオまでに掲げるものをいい、麻酔前の状態により評価する。(18) 神経ブロックを超音波ガイド下に併せて行った場合は、「注9」に掲げる点数を所定点数に加算する。この際、硬膜外麻酔の適応となる手術(開胸、開腹、関節置換手術等)を受ける患者であって、当該患者の併存疾患や状態等(服用する薬により硬膜外麻酔が行えない場合を含む。)を踏まえ、硬膜外麻酔の代替として神経ブロックを行う医学的必要性があるものに対して実施する場合は「イ」に掲げる点数を、それ以外の患者(硬膜外麻酔の適応とならない手術を受ける患者を含む。)に対して実施する場合は「ロ」に掲げる点数を、それぞれ所定点数に加算する。なお、「イ」の加算を算定する場合は、硬膜外麻酔の代替として神経ブロックを行う医学的必要性を、診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。(19) 「注10」に規定する非侵襲的血行動態モニタリング加算は、動脈圧測定用カテーテル、サーモダイリューション用カテーテル、体外式連続心拍出量測定用センサー等を用いた侵襲的モニタリングが実施されている場合には、算定できない。(20) 「注11」に規定する術中脳灌流モニタリング加算は、近赤外光を用いて非侵襲的かつ連続的に脳灌流のモニタリングを実施した場合に算定できる。

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