[留意]I002 通院・在宅精神療法

I002 通院・在宅精神療法
(1) 通院・在宅精神療法とは、入院中の患者以外の患者であって、精神疾患又は精神症状を伴う脳器質性障害があるもの(患者の著しい病状改善に資すると考えられる場合にあっては当該患者の家族)に対して、精神科を担当する医師(研修医を除く。以下この区分において同じ。)が一定の治療計画のもとに危機介入、対人関係の改善、社会適応能力の向上を図るための指示、助言等の働きかけを継続的に行う治療方法をいう。
(2) 通院・在宅精神療法は、精神科を標榜する保険医療機関の精神科を担当する医師が行った場合に限り算定する。
(3) 通院・在宅精神療法は、同時に複数の患者又は複数の家族を対象に集団的に行われた場合には算定できない。
(4) 通院・在宅精神療法の「1」のイ及び「1」のハの(2)並びに「2」のイ及び「2」のハの(3)は、診療に要した時間が5分を超えたときに限り算定する。
(5) 通院・在宅精神療法の「1」のロ及び「2」のロは、区分番号「A000」初診料を算定する初診の日(区分番号「A000」の初診料の「注5」のただし書に規定する初診を含む。)は、診療に要した時間が60分以上の場合に限り算定することとし、「1」のハの(1)及び「2」のハの(2)は、診療に要した時間が30分以上の場合に、「2」のハの(1)は、診療に要した時間が60分以上の場合に限り算定する。この場合において、診療に要した時間とは、医師が自ら患者に対して行う問診、身体診察(視診、聴診、打診及び触診をいう。)及び当該通院・在宅精神療法に要する時間をいい、これら以外の診療に要する時間は含まない。
(6) 通院・在宅精神療法の「1」のイ及び「2」のイについては、当該患者の退院後支援についての総合調整を担う都道府県、保健所を設置する市又は特別区(以下「都道府県等」という。)が、精神障害者の退院後支援に関する指針を踏まえて作成する退院後支援に関する計画に基づく支援期間にある患者に対し、当該計画において外来又は在宅医療を担うこととされている保険医療機関の精神科の医師が実施した場合に限り算定できる。
(7) 通院・在宅精神療法の「1」のイ又は「1」のロ及び「2」のイ又は「2」のロを算定する保険医療機関においては、以下のいずれかの要件に該当していること等、標榜時間外において、所属する保険医療機関を継続的に受診している患者に関する電話等の問合せに応じる体制を整備するとともに、必要に応じてあらかじめ連携している保険医療機関に紹介できる体制を有していることが望ましい。
ア 区分番号「A001」再診料の時間外対応加算1の届出を行っていること。
イ 精神科救急情報センター、都道府県、市町村、保健所、警察、消防(救急車)、救命救急センター、一般医療機関等からの患者に関する問合せ等に対し、原則として当該保険医療機関において、常時対応できる体制がとられていること。また、やむを得ない事由により、電話等による問合せに応じることができなかった場合であっても、速やかに折り返して電話することができる体制がとられていること。
(8) 通院・在宅精神療法を算定するに当たっては、診療録に当該診療に要した時間を記載すること。ただし、当該診療に要した時間が明確でない場合には、当該診療に要した時間が5分、30分又は60分を超えたことが明らかであると判断される精神療法を行った場合に限り、「○分超」などの記載でも差し支えない。また、通院・在宅精神療法の「1」のロ又は「2」のロ又は「2」のハを算定する場合にあっては、診療報酬明細書の摘要欄に当該診療に要した時間を記載する。
(9) 当該患者の家族に対する通院・在宅精神療法は、家族関係が当該疾患の原因又は増悪の原因と推定される場合に限り算定する。ただし、患者の病状説明、服薬指導等一般的な療養指導である場合は、算定できない。家族に対して通院・在宅精神療法を行った場合は、診療報酬明細書の摘要欄に 家族 と記載する。
(10) 通院・在宅精神療法を行った場合(家族に対して行った場合を含む。)は、その要点を診療録に記載する。
(11) 患者に対して通院・在宅精神療法を行った日と同一の日に家族に対して通院・在宅精神療法を行った場合における費用は、患者に対する通院・在宅精神療法の費用に含まれ、別に算定できない。
(12) 入院中の患者以外の精神疾患を有する患者に対して、通院・在宅精神療法に併せて区分番号「I004」心身医学療法が算定できる自律訓練法、森田療法等の療法を行った場合であっても、通院・在宅精神療法のみにより算定する。
(13) 当該患者に対する通院・在宅精神療法を算定した場合は、同じ日に区分番号「I003」標準型精神分析療法は算定できない。
(14) 通院・在宅精神療法は、精神科を標榜する保険医療機関の精神科を担当する医師が、訪問診療又は往診による診療を行った際にも算定できる。
(15) 「注3」に規定する加算は、必要に応じて児童相談所等と連携し、保護者等へ適切な指導を行った上で、20歳未満の患者に対して、通院・在宅精神療法を行った場合(当該保険医療機関の精神科を初めて受診した日から起算して1年以内の期間に行った場合に限る。)に、所定点数に加算する。
(16) 「注4」に規定する児童思春期精神科専門管理加算は、児童思春期精神科の専門の医師(精神保健指定医に指定されてから5年以上にわたって主に20歳未満の患者に対する精神医療に従事した医師であって、現に精神保健指定医である医師をいう。)又は当該専門の医師の指導の下、精神療法を実施する医師が、20歳未満の患者(イについては16歳未満の患者に限る。)に対し、専門的な精神療法を実施した場合に算定する。
(17) 「注4」のロについては、発達障害や虐待の有無等を含む精神状態の総合的な評価、鑑別診断及び療育方針の検討等が必要な者に対し、発達歴や日常生活の状況の聴取・行動観察等に基づく、60分以上の専門的な精神療法を実施すること。なお、実施に当たっては、以下の要件をいずれも満たすこと。
ア 発達障害の評価に当たっては、ADI-R(Autism Diagnostic Interview‒Revised)やDISCO(The Diagnostic Interview for Social and Communication Disorders)等で採用されている診断項目を考慮すること。
イ 患者及び患者の家族に、今後の診療計画について文書及び口頭で説明すること。説明に用いた診療計画の写しを診療録に添付すること。
(18) 「注5」に定める特定薬剤副作用評価加算は、抗精神病薬を服用中の患者について、精神保健指定医又はこれに準ずる者が、通常行うべき薬剤の副作用の有無等の確認に加え、更に薬原性錐体外路症状評価尺度を用いて定量的かつ客観的に薬原性錐体外路症状の評価を行った上で、薬物療法の治療方針を決定した場合に、月1回に限り算定する。この際、別紙様式33に準じて評価を行い、その結果と決定した治療方針について、診療録に記載すること。なお、同一月に区分番号「I002-2」精神科継続外来支援・指導料の「注4」に規定する特定薬剤副作用評価加算を算定している患者については、当該加算は算定できない。
(19) 「注6」に定める所定点数には、「注3」から「注5」までの加算を含まないこと。また、別に厚生労働大臣が定める要件は、特掲診療料の施設基準等別表第十の二の四に掲げるものを全て満たすものをいう。なお、その留意事項は以下のとおりである。
ア 「当該保険医療機関において、3種類以上の抗うつ薬及び3種類以上の抗精神病薬の投与の頻度が一定以下であること」とは、当該保険医療機関において抗うつ薬又は抗精神病薬のいずれかを処方された患者のうち、3種類以上の抗うつ薬又は3種類以上の抗精神病薬を処方された患者の割合が1割未満であるか、その数が20名未満であることをいう。なお、抗うつ薬及び抗精神病薬の種類数は区分番号「F100」処方料における計算方法に準じる。抗うつ薬又は抗精神病薬を処方された患者のうち、3種類以上の抗うつ薬又は3種類以上の抗精神病薬を処方された患者の割合は、区分番号「F100」処方料(3)ウにより報告したもののうち、直近のものを用いることとする。また、抗不安薬を3種類以上、睡眠薬を3種類以上、抗うつ薬を3種類以上又は抗精神病薬を3種類以上投与(以下この部において「向精神薬多剤投与」という。)していないために当該報告を行わなかった保険医療機関については、当該要件を満たすものとして扱う。
イ 「当該患者に対し、適切な説明や医学管理が行われていること」とは、当該月を含む過去3か月以内に以下の全てを行っていることをいう。
(イ) 患者又はその家族等の患者の看護や相談に当たる者(以下イにおいて「患者等」という。)に対して、当該投与により見込む効果及び特に留意する副作用等について説明し、診療録に説明内容及び患者等の受け止めを記載していること。ただし、説明を行うことが診療上適切でないと考える場合は、診療録にその理由を記載することで代替して差し支えない。
(ロ) 服薬状況(残薬の状況を含む。)を患者等から聴取し、診療録に記載していること。
(ハ) 3種類以上の抗精神病薬を投与している場合は、「注5」に掲げる客観的な指標による抗精神病薬の副作用評価を行っていること。
(ニ) 減薬の可能性について検討し、今後の減薬計画又は減薬計画が立てられない理由を患者等に説明し、診療録に説明内容及び患者等の受け止めを記載していること。
ウ 「当該処方が臨時の投薬等のもの又は患者の病状等によりやむを得ないものであること」とは、区分番号「F100」処方料(3)のアの(イ)から(ニ)までのいずれかに該当するものであることをいう。
(20) 「注7」に規定する措置入院後継続支援加算は、通院・在宅精神療法の「1」のイを算定する患者に対し、医師の指示を受けた看護職員又は精神保健福祉士が、対面又は電話で、月1回以上の指導を行った上で、3月に1回以上の頻度で当該患者の退院後支援について総合調整を担う都道府県等に対し、当該患者の治療や生活の状況及びより一層の支援が必要と考えられる課題について、文書で情報提供している場合に、3月に1回に限り算定できる。診療録等において、毎回の指導内容を記載するとともに、都道府県等への情報提供の写しを記録すること。なお、指導等を実施した月の翌月以降に通院・在宅精神療法を行った場合に算定しても差し支えないこととし、指導等を行った月と算定する月が異なる場合には、診療報酬明細書の摘要欄に指導等を行った月を記載すること。
(21) 「注8」に規定する療養生活環境整備指導加算は、通院・在宅精神療法の「1」を算定する患者について、精神病棟における直近の入院において、区分番号「B015」精神科退院時共同指導料の「1」精神科退院時共同指導料1を算定した患者であって、退院した日の属する月の翌月末日までに当該保険医療機関を受診したもの又はその家族等に対して、精神科を担当する医師の指示の下、保健師、看護師又は精神保健福祉士が、療養生活環境を整備するための指導を行った場合に月1回に限り算定できる。なお、実施に当たっては、以下の要件をいずれも満たすこと。また、精神科退院時共同指導料1を算定した月と当該加算を算定する月が異なる場合には、診療報酬明細書の摘要欄に直近の精神科退院時共同指導料1を算定した年月を記載すること。
ア 当該患者の支援方針等について、多職種が共同して、3月に1回の頻度でカンファレンスを実施すること。また、カンファレンスには、以下の(イ)から(ハ)までの職種がそれぞれ1名以上参加していること。なお、必要に応じて、(ニ)から(ヌ)までの職種が参加すること。ただし、(イ)から(ヘ)までについては、当該保険医療機関の者に限る。
(イ) 当該患者の診療を担当する精神科の医師
(ロ) 保健師又は看護師(以下この項において「看護師等」という。)
(ハ) 精神保健福祉士
(ニ) 薬剤師
(ホ) 作業療法士
(ヘ) 公認心理師
(ト) 在宅療養担当医療機関の保険医の指示を受けた訪問看護ステーションの看護師等
(チ) 在宅療養担当医療機関の保険医の指示を受けた訪問看護ステーションの作業療法士
(リ) 市町村若しくは都道府県等の担当者
(ヌ) その他の関係職種
イ アのカンファレンスにおいて、患者の状態を把握した上で、多職種が共同して別紙様式51の2に掲げる「療養生活環境整備に関する支援に関する計画書」(以下この区分において「支援計画書」という。)を作成し、その写しを診療録等に添付する。なお、支援計画書の作成に当たっては、平成28~30年度厚生労働行政推進調査事業において「精神障害者の地域生活支援を推進する政策研究」の研究班が作成した、「包括的支援マネジメント実践ガイド」を参考にすること。ただし、初回のカンファレンスについては、区分番号「B015」精神科退院時共同指導料に規定する指導を実施した日から当該患者の状態に著しい変化を認めない場合に限り、当該指導時に作成した支援計画書(直近の入院中に作成した支援計画書に限る。)を用いても差し支えない。
ウ 当該患者を担当する看護師等又は精神保健福祉士は、患者等に対し、イにおいて作成した支援計画書の内容を説明し、かつ、当該支援計画書の写しを交付した上で、療養生活環境の整備のための指導を行う。また、担当する患者ごとに療養生活環境整備指導記録を作成し、当該指導記録に指導の要点、指導実施時間を明記すること。
(22) 「注9」に規定する療養生活継続支援加算は、通院・在宅精神療法の「1」を算定する患者であって、重点的な支援を要するものに対して、精神科を担当する医師の指示の下、看護師(適切な研修を受けた者に限る。以下この区分において同じ。)又は精神保健福祉士が、当該患者又はその家族等に対し、医療機関等における対面による20分以上の面接を含む支援を行うとともに、当該月内に保健所、市町村、指定特定相談支援事業者、障害福祉サービス事業者その他の関係機関と連絡調整を行った場合に、初回算定日の属する月から起算して1年を限度として、月1回に限り算定できる。なお、実施に当たっては、以下の要件をいずれも満たすこと。
ア 対象となる「重点的な支援を要する患者」は、平成28~30年度厚生労働行政調査推進補助金障害者対策総合研究事業において「多職種連携による包括的支援マネジメントに関する研究」の研究班が作成した、別紙様式51に掲げる「包括的支援マネジメント 実践ガイド」における「包括的支援マネジメント 導入基準」を1つ以上満たす者であること。
イ 当該患者を担当する看護師又は精神保健福祉士が、患者の状況を把握した上で、初回の支援から2週間以内に、多職種と共同して支援計画書を作成し、その写しを診療録等に添付すること。なお、支援計画書の作成に当たっては、平成28~30年度厚生労働行政推進調査事業において「精神障害者の地域生活支援を推進する政策研究」の研究班が作成した、「包括的支援マネジメント 実践ガイド」を参考にすること。
ウ 当該患者を担当する看護師又は精神保健福祉士は、患者等に対し、イにおいて作成した支援計画書の内容を説明し、かつ、当該支援計画書の写しを交付した上で、療養生活継続のための支援を行う。また、保健所、市町村、指定特定相談支援事業者、障害福祉サービス事業者その他の関係機関との連絡調整に当たっては、関係機関からの求めがあった場合又はその他必要な場合に、患者又はその家族等の同意を得て、支援計画に係る情報提供を行うこと。
エ 担当する患者ごとに療養生活継続支援記録を作成し、当該指導記録に支援の要点、面接実施時間を明記すること。
(23) 「注9」に規定する療養生活継続支援加算は、対象となる状態の急性増悪又は著しい環境の変化により新たに重点的な支援を要する場合について、要件を満たす場合に、再度の算定日の属する月から起算して1年を限度として、月1回に限り350点を所定点数に加算する。なお、この場合においては、診療報酬明細書の摘要欄に、急性増悪等における具体的な状態について記載すること。また、新たに重点的な支援を行うこととなった日を記載した支援計画書を、患者又はその家族等に説明の上交付するとともに、その写しを診療録に添付すること。

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